誰でもいい なんてそんな事、思ってみたことも ない。 「朝、ホント弱いね──」 藤代は。 と隣の席で彼女がこっそりと微笑った。おれがこうして微笑う彼女が見たくて、時々わざと遅刻している事を知っているのは ルームメイトただ一人だけ。 「そう思うなら朝 起こしに来てくんない?」 そしたら俺、起きれるかも と言ってわらいかける。そしたら彼女は「ばーか」といたずらっぽく笑って前の黒板の方に向きなおした。少し残念な気持ちに なる。 彼女───に恋をしたのは、ヒトメボレでもなければ、何かきっかけがあったわけでもない。 まるで何かが成長していくかのようにじわじわ と、おれの中でどんどんの存在が大きくなっていった。 に会うことが俺の、学校での一番大きなたのしみ だったりする。 * 「折角のオフなのに、」 勿体無いんじゃない? と、彼女は日誌にペンを走らせながら聞いて来た。「大丈夫」と、返事をして俺の視線はずっと彼女の横顔。 「こうしてる時間もスキだから、俺」 「日直がすき?」 「っ、そんなわけないじゃん」 あはは と、心底楽しそうに笑って でも、彼女は何もわかっていない。夕日に映える 彼女がとても綺麗に見えて本当に締め付けられる。胸が、 「と居る時間がスキなんだってば」 「またぁ────」 上手いね、藤代は と、そう言って微笑う彼女の仕草はいつもと同じ。俺が何度同じ事を言っても決して本気にはしてくれない。けどこんな関係でも今はまだ満足だから。いつか俺だけのことを見て、俺と同じ気持ちになってくれたらいい と、 「──あれ、もうそんなとこまで進んでんの?」 彼女が書く、日誌の今日の数学の授業の内容。暫く学校を休んでいる間に いつもの様に遅刻している間に随分と、進んでしまっているようだった。 「そうだよー、藤代全然来ないから」 みんなどんどん進んでるよ と、いたずらには微笑った。いくら自分が特別扱いだとはいえ、サッカーがあるから仕方ない と、他人に妥協されることは嫌いだった。 「やばいな、おっつくかなー…」 「教えたげよっか?」 わたし得意だよ 数学 と、至極自然には言った。こう言われることを期待して言ったんじゃなかっただけに、俺は心底嬉しくなる。 「え、ホント?うん、教えてよ」 「言っとくけどわたし、スパルタだよ?」 ちょっと意地悪そうな表情をして言うけれど、そんな仕草も全部 俺の想いを増長されるだけでしかない事を、彼女は知らない。 「どうしよう、図書室行く?」 「うん、わたしはどこでもいいけど」 「でも図書室もあと一時間しか居られないなー」 ちょっと暫く、教室開けたまま借りられるかな と考えながら、小さく言葉にしてみた。 「じゃあ、藤代の部屋でもいいよ」 「……え?」 「…?、その方が」 しっかり勉強出来るでしょう? と、何にも臆することなくは言った。深い意味なんて無いことなんてわかってる。 「藤代?」 「えー…あー…、うん…」 「ね、どうしたの…」 ほんの少しでも と、甘い希望を持ってしまうのは仕方のないことだけれど、FWの俺がずっと守りに入ってたこと自体 悪かったのかもしれない(サッカーで例えるのもなんだけど) 「 さ、わかってないよね」 「え?わかってるよ?」 数学得意だってば なんて言ってる彼女は鈍感以外の何者でもないのか。 「…いいや、自分でがんばってみる」 「え…?」 断った俺に、不安そうな顔を向けてくる。この関係を崩したくない と思っていたのは、の中で他のどんなヤツよりもほんの少しだけでも俺が「特別」だと感じていたから。 「…だからさ、」 「ふじ…」 強く合わせた唇に、俺の想いを全部乗せる。 「いいかげん さ、」 ────気付いてよ。 イエア藤代くん。控えめなのか積極的なのかわからない彼でした。 20061111(20050714) 秋夢うい (気付いてくれなきゃ勉強 しない) なんてね。 |