あのときの想いは確かなもので、今のこの想いも決して嘘じゃない。










確かにあのとき、わたしたちは子供で、考えることもしていることも本当に子供で、浅はかではあったけれど、それなりに悩んでは答えを見つけて まっすぐな恋を、していた。


「────あ、」

偶然に。なんていらなかった相手と偶然に会ってしまう事ほど、嫌で哀しいものはない。


「よぉ」

夜も遅い、いつもなら深い眠りについているだろうこの時間、何故か目が冴えて眠れなかったわたしは、眠気を誘おうと その為のお酒をコンビニまで買いに出た。まさかこんなところでこんな、彼に会うだなんて思ってもみなかったけれど。

「なんだ、お前こんな時間からそんなモン飲むのか?」
「え、あ、なんか今日寝付き悪くて──」

睡眠薬代わり? と、答えるわたしは何故か疑問系にして返す。「なんで俺が聞かれるんだ」と、わたしの買い物かごから目を放して、彼はそう言った。


「あんたは何してんの」
「別に。俺も寝つき悪かったからふらふら出てきただけ」

「ふーん、」

ぐうぜんね。と、わたしは至極自然に彼から視線をはずす。わたしの知っている高校生の時の彼と、何一つ変わらない様子に、一人気まずい思いをしているわたしは馬鹿らしくなってため息をつく。


「ま、これも縁だろ」
「え、ちょ 三上…っ!?」

わたしの選んだものと同じ缶ビールをひとつ取って、彼はわたしの手からかごを奪った。そのままレジに向かうと自分の分も合わせてその代金を支払った。


「ありがとうございましたー…」

あまり愛想のない店員から袋を受け取ると、彼は少しだけわたしの方を見て「行くぞ」と言って足早にコンビニを出た。


「ちょっと!三上!」
「あんだよ」
「なんだよ じゃないわよ!どういうつもり!」

何考えてんのよ! と、彼の手から袋を奪い返そうと伸ばした腕を、掠めるように掴まれた。その部分がぎゅ と一瞬熱くなって わたしの顔も熱くなる。


「家帰ったって一人で寂しく飲むんだろ。どうせだから、」

俺んち、来いよ と、流すような目で見つめられてわたしは何も言えず おとなしく腕を引かれているしかなかった。彼の家の前について腕を離されるその直前まで、紅くなっていただろう顔を見られなくて済んだのは、夜のおかげだ。


「ずいぶんと贅沢な暮らし してんのね」

連れて行かれた彼の家は、わたしが一人暮らししている家に意外と近くて、このあたりじゃ一番高級なマンションだった。

「おう、俺様らしいだろ」

気品が漂ってて と彼は部屋の鍵を開けながらそう言った。下品の間違いじゃないの と、悔しくて嫌味にそう言ってやったら「あほか」と軽く頭を小突かれた。


「お前今何やってんの」
「別に、普通に大学生やってますけど」

「ふーん、あそ」

通されたリビングで、大きめのソファにふたり並んで缶ビールを開ける。その時聞かれて答えたら、彼は興味なさげに相槌をうった。

「腹立つわねアンタ」
「俺のことは聞かねぇの?」

彼の態度にムカついて、ぐい と一つ、大きくビールを流し込むと ぷは と息を吐いて微妙に間隔の空いた隣に座るヤツを軽く睨みつけてやった。


「興味ないわね、」

あんたのプロ生活なんか と言ってやる。なんだちゃんと知ってんじゃねぇかよ と言うような顔でわらった彼に、「馬っ鹿じゃないの」と追加して。


「相変わらずだな お前」
「悪かったわね」
「別に悪かねぇよ」

「…なによアンタ、」

なんなのよ と言って直後、わたしは泣きそうになる。感覚が、全ての間隔が高校生の頃の、あの時のわたしに戻りそうな 気 が し て 。

本当は情けないくらいに弱いお酒を、強がってたった今急に流し込んだ所為で、あつく なる。からだがあつくなって、顔もあつくなって、目もあつくなる。


「お前今、オトコいんの?」
「うっさいわねほっといてよ」
「……」

そんなわたしを悟られたくなくて、強がってまたビールを流し込む。あの頃 強がっていろんな事から逃げてたのと何も変わらない。会えて嬉しい なんて言葉、わたしには言えるはずがなくて、言える権利なんかもちろんなくて。



『今日言おう ってずっと考えてた』



「みか…」

何も言わなくなった彼の方に向こうとして ぐらり と頭が揺れる感覚がして、


「ほんと、変わんねぇよ」
「離して、よ…っ」

両肩をつよく押さえつけられて、目の前に見えるのは大人になった三上の顔と、その後ろには白い天井。押しのけようと力を入れても、酔いがある所為で上手く力が入らない。


「いい加減にして、三上…!」
「…ヤダ っつったら?」
「…っアンタ 遊ぶだけなら他に、」

沢山いるでしょう と、睨みつけて言う。けれど彼は少しだけ眉を寄せて、真剣な顔でわたしをとらえてはなさない。


「オトコ、いんのかよ?」
「あんたには関係ないじゃ…っ」

ぐらぐらとする頭で、必死に紡いだ言葉は 彼の冷たい唇でふさがれた。強引で無理矢理なキスなのに、それがなぜか やさしい だなんて思ったのは、きっとこの酒の所為だ。

「んっ、や…ぁ!」
「コッチは大人になったんじゃねぇの」

「ば、か…三上…っ!」

やさしいキスに囚われて、抵抗出来なくなってしまったのも、きっと全部 このお酒の所為。
わたしのおもいは全部、あの時捨てて来たんだから。



『わたしじゃなくてもいいんでしょう?』



「んや、あ、みかみ…っ!」
「オトコ、いねぇんだな…」

わかりやすいヤツ と言って満足そうにわらった。そんな彼の下で、わたしは全裸になって息を荒げてる。彼の冷たくて巧みな指が、わたしのからだを這い回る。


「…っ!」

彼の指が、わたしの下の突起に触れてきた。電気が走ったみたいに、わたしのからだは敏感に反応する。焦らすような動きでそこを撫でられ続けて、もっと刺激が欲しくて自然と腰が浮く。


「何、誘ってんの?」

オネエサン と、唇にキスを落としながら言った。いつの間にか彼も上半身裸になっていて、ふと視線を落とすと彼の下半身も服の上からでも判るくらい大きく膨らんでいた。こいつはいつもそうだった。自分だって早く挿れたいはずなのに、わたしを焦らしては反応を楽しんでいた。


「ムカ、つく…っ!」
「まだ余裕あんじゃん、」

きゅ と、鎖骨の下あたりにちくりとした痛みを感じて、跡をつけられる。感じたくなんかないのに、キモチイイ を求めてわたしのからだが勝手に反応する。

ぬる とした感触があって、彼の指がゆっくりとわたしのナカに入ってきた。それを求めていたわたしのからだは、彼の指をもっと奥まで誘い込もうと 反応を続ける。いやらしい水音と、わたしの嬌声が三上のこの部屋に響く。

「もぉっ、や、みかみ…っ」
、」

彼が初めてわたしの名前を呼んだ。開けていられなくなっていた目を開けると、少し眉根を寄せた、三年前までだいすきだった顔があった。


「ふ、ん…っ!」
「力 抜け、」

と、またわたしの名前を呼んだ。彼がゆっくりとわたしのナカに入って来る。あまりにもゆっくりと来るもんだから、また やさしい だなんて思ってしまう。ぐぐ と、わたしの中が彼を受け入れようと、その大きさに合わせて広がっていく感じがわかる。


「やべ、あんまもたねぇかも」

最奥まで入りきった後、ちいさくそう言って 彼はゆっくりと、今度は抜けるギリギリまで後ろに引いた。

「は、あぁ…」

それだけでも達してしまいそうな快感が、わたしを襲う。生理的なものか、涙の浮かぶその目で彼を見ると、目が 合った。


「っ、みか み…」
「三上 じゃねぇだろ」

彼が不満そうに眉を寄せて、直後に ぐ と一気に突き入れてきた。その衝撃でわたしは息を詰まらせてぎゅ と目を瞑る。


「ぅ、あ、はぁ ん」
「…っは、」

目を瞑ったら、繋がっているその一点に意識が集中して、そのことしか考えられなく なる。耳元で彼の荒い息遣いが聞こえてきて、きゅう と胸が締め付けられる。

「っハ、締めてくれんじゃ ねぇの」
「ぅあっや、みか みっ」
、」

彼のかすれた、ひくいこえが直接 鼓膜に響くようにしてはいってくる。いたい、こころが泣きそうなほどなにかに包まれているみたいで、からだが、想いが、全部、



────感覚が、あの頃に 戻ってし ま い そ う。



「や、も、きて…あきらっ!」
「っ…」


あまえてしまいそう。

悪ぶってるだけで、本当はすごくすごく大事にしてくれてたことも わかってたはずなのに。

それがわたしにとってはとても痛くて、けどほんとうは 傍に、居たくて。



「あきら…っ!!」
「…っつ」





「お前が別れたいっつーんだから、俺が引きとめたって無駄だったろ」
「…まさかずっと根に持ってただなんて思わなかった…」

目が覚めたら、もう朝だった。寝てる間に(というか気を失ってた間に)運ばれたのか、ベッドに寝かされていて 隣には三上。
高校生の時に告白して 付き合い始めて、そしてわたしから別れを切り出した日から丁度三年。


「根にも持つさ。俺は別れる気なんか、」

さらさらなかったんだからなあの時は と、正面から少し乱暴に わたしの髪を掻きあげてきた。

「去年の成人式だって、お前に会ったら絶対抑えきれねぇと思ったから、」

渋沢道連れにしてまで式、出なかったんだ と三上は言った。


「あー…そうなんだ」
「んだよその反応」

不満そうに眉を寄せた彼を見て、こんなこと言えるわけ ない。


「まさかこれっきりだなんて、言うんじゃねえだろうな」
「…何よ」
「…ありえねぇよ、あのときのお前の台詞」


「亮なら他にもたくさん、いるでしょ」


「お前と付き合ったあのときから、俺はずっとお前しか見てなかったんだよ、」

それなのにわけわかんねぇ事言い出すしよ と三上はそれこそ不満そうに顔を歪めた。そんなことを真顔で、しかもこんなに近くで言われてあたしは 嬉しくて泣きそうになる。

言えるわけない と思って、でも今 わたしのこころを満たすこの想いは、あの頃となにひとつ、変わったりなんかしていない。


────あのときの想いは確かなもので、今のこの想いも決して嘘じゃない。


「せっかくまた捕まえたんだ。放す気 ねぇからな」
「なによ、わたしの意志はお構いなしなの?」

この俺様は。 と言っておきながら、わたしの顔はうれしくてわらっている。


「オトコ居ねぇのはもうわかってんだからな」
「そう、それよ!なんで彼氏いない ってわかんのよ?」

まさかずっとつけてたんじゃないでしょうね! と、ちょっと本気でストーカー呼ばわりをしてやる。

「俺は変態か!…そんなモン、セックス一回でわかんだよ」
「は?」

なんでよ? と、わたしは本当にそれが何でか理解らなくて眉を寄せる。すると三上は少し目を細めて、嫌味に微笑った。

「お前のからだのクセ、」

なにひとつ変わってなかったからな と言って三上はキスをしてきた。重ねられた唇は、溶けそうなくらいあつくて、あまくて。

「 ヘ ン タ イ 」
「愛だろ、愛」

もう別れてやんねぇ とわらう彼を見て、心の底から嬉しくて幸せでわたしも笑う。


────いつか失うことが怖くて、逃げてたわたしの幼い 恋。


あなたのその言葉を、信じてもいい? なんて、聞かなくても 大人になったわたし達は大丈夫。子供のようにじゃれ合うこの会話の間中、ずっと握られていた手が 想いの深さを教えてくれた。

けれど、こんなこと きっと一生言えるわけない。


ずっとずっとあなたのことが好きでした。
これからもだいすきです。



────わたしだけのやさしい ひと。




エロ描写つき(しかも全然エロくない)なんか急にみかみんが書きたくなって、書いてたらなんかソッチに話が進んでしまいました。意味不明なお話でごめんなさい。や、彼は悪ぶってるだけで一途でとても純粋なひとなんですよ!

20061109(20050417) 秋夢うい

やっと手に入れた、手放す気なんてさらさらねぇよ