決してこれ以上縮まることがないと思っていた、あたし達のこの関係を言葉に表すとすればきっと それは、










昔から、小さい頃からずっと一緒だった。物心が付くころには、今日も明日も明後日も、それから先もずっと 一緒なんだと信じて疑わなかった幼少期。
小学生になって、あたしも克朗も世界が少し広がった。克朗以外に友達が出来た。克朗はサッカーに出会った。ほんの少しだけ、距離は遠くなったけれどそれでもまだまだ近かった。

中学生になった。ずっと一緒なんだとまだ信じて疑わなかった。だからあたしも武蔵森を受けた。
学ぶ場所は違っても、でも離れているとは思わなかった。


、」
「あーかつろーだー」

がんばってるかね守護神 と、ゴールを護るように両腕を広げてみせた。「まぁな」と、中学生には見えない雰囲気で一つ笑って、あたしの隣を歩き出した。


「今日は練習ないの?」
「全国大会も終ったし、俺達三年は基本的には な」

「そっか、」

淋しいんだ と、目を細めてあたしよりも遥かに高い克朗を見上げて言った。俺「達」と言葉を括ったあたり、なんて克朗らしいんだろう と思って嬉しくなる。


「でもだからって練習しなくなるわけじゃないでしょ?」
「まだ選抜の方は残っているし、高等部の方の練習に顔を出すように言われてるよ」
「だろーね」

克朗はあたしの自慢だ。誰よりも大きくて(背だけじゃなくて)、誰よりも優しくて、誰よりも、小さい頃からあたしを護ってくれていた。誰よりも強い。
そんな克朗が、あたしは大好きなんだ。


「また、克朗がサッカーしてるの見れるんだね」

嬉しくて、頬が緩む。どれだけ回りに嫌味を言われて、疎まれても これだけはずっと一緒に居る、あたしだけの特権だ。

ふと克朗を見上げると、彼もあたしの方を見てわらっていて。「なに?」と聞くと「いや」と苦笑してあたしから視線をそらした。


「終ったんだね、」
「ん?」
「夏。終っちゃったんだなぁ って」

あと何回、こうして克朗と一緒に歩けるのかな、ああまた夏が来たね って──



「カッちゃん!カッちゃーん!」

小学校に入ってすぐのこと。サッカーに出会ってどんどんそれに夢中になっていく克朗の名前を、必死になって何度も何度も呼んでいた。寂しかったんだ。何かに、克朗を奪られる事が。

今でも覚えてる、あれはすごく暑い夏の日の夕方だった。


「カッちゃん帰ろうよ!」
「待って、もう少し」

最初は待たされるのがすごく嫌いだった。一緒にいても克朗はあたしのことを見てくれてなかったから。今にして思えば、子供のちっぽけな独占欲だったんだろうけど。


「来年の夏は、海にでも行くか」
「え?」

好きだろう海 と言って、いつものやさしい目で。「来年」と言われて、ああ その時までは一緒に居てもいいんだなと、先の見えない約束にすがりつく。それでも嬉しいんだ。


「…うん、行く。…行こうね」
「ああ」
「来年かー!その時はもうあたし高校生だし、」

すっごい水着着てくよ〜 と、目を細めて克朗を見上げる。彼は少し驚いたような表情をして、


「それは困ったな、そこまでは考えてなかった…」
「…え?」

ただ、気付いてなかっただけ。
決してこれ以上縮まることがないと思っていた、あたし達のこの関係を言葉に表すとすればきっとそれは、ただの幼馴染 で止まっているはずだった。


「俺以外にの水着姿を見られるのは気分が悪い、」


────やっぱり海に行くのはやめにしないか?


ただ、気が付いてなかっただけ。
これ以上縮まらないと思っていた距離は、もうなかったということに。きっともう、いつのまにかお互いの気持ちだけは見えない部分で繋がっていて、


「かっ、克朗…っ!?」
「ん、なんだ?」

優しい笑顔が夏の陽に眩しくひかる。鼻の奥がツンとして、じわりと目に涙が浮かんでくる。それを見られたくなくて咄嗟に少し俯く。

その時繋がれた手のひらが、とてもとても熱かった。




某素敵なキャプスキさんに捧げたもの。付き合う前のドキドキした感じとか、初々しい感じがだいすきです。

20061109(20050729)   秋夢うい 

「俺以外男が居ない海水浴場とかないものかな」「…それじゃあただのエロオヤジだよ克朗」