気付いて欲しくて、気付いて欲しくなくて。でもやっぱり気付いて欲しくて。 ずっとずっと、うしろから見ているだけだった、 中学校に入学して、初めて彼を見たのは 教室の窓から見えたグラウンドで、他のクラスが体育の授業でサッカーをしているときだった。 彼は、型も滅茶苦茶な試合で、力任せで下手くそなクラスメイトの中に混じって、すごく目を引いた。遠目から見ても彼はすごくすごく、巧くて。 授業に集中できなくてずっと見ていて、何度も先生に怒られた。サッカーのカリキュラムが終っても、グラウンドで彼のクラスが授業の時には何故かいつも目が彼を追っていて。 二年生に進級して、クラスが隣り合わせになった。体育は男女別に 2クラス合同でするおかげで、体育の授業だけは重なるようになった。授業場所がグラウンドか 体育館のどちらかで同じの時にも、目だけはずっと彼を追っていた。 あるとき、一年生のときよりも見てる距離が縮まったことに気がついた。 目で彼を追っては、授業に集中できず、よく顔にボールをぶつけた。(バレーとかバスケとか、すごく痛かった) そして三年生に進級して、なんとクラスが同じになった。そこで初めて彼の名前が『郭英士くん』だということを知った。それまで、あれだけずっと見ていて、名前を知ろうともしなかったあたしは、なんだかすごく 変だ。 私の席は窓際の1番後ろ。郭くんの席はあたしの斜め前、5人分離れた微妙なところだったけれど。 最初の年より、遥かに遥かに うんと距離は縮まった。 やっぱり毎日毎時間彼を見てるようになって。でも何故か先生に怒られることは無くなった。 そして郭くんはサッカーのアンダーなんとかという日本代表選手なんだと知って。将来有望な、未来のプロサッカー選手なんだとも知った。 ああ、なんだか世界の違うひとだなあ と、 距離は縮まったけれど、でも距離は遠くなったような気もしていた。 *** 今日も郭くんはきれいだ。(男の子にきれいは変かも知れないが郭くんはきれいだ) まっすぐに背筋を伸ばして、黒板の方を向いて、先生の話を聞いている。ふと、教室中を見まわしてみた。 1、2、3…4。 4人。 今、このクラスで郭くんを見ている女の子の数だ。郭くんはあまり人を寄せ付けない空気を持っているので、堂々と話し掛ける女の子は少ない。だから大概の子はこうして見ているだけだと思う。 ────げんに、あたしもその一人だし。 今日もきれいだな、と思って見惚れている。決してバレないように。 けれどあたしの事をずっと見ている人が居ればバレてるかもしれないが、そんな人居ないだろうし。だからあたしはずっと、堂々と、けどこっそりと郭くんを見ることが出来る。 教室の1番後ろの、特等席。 「えー、だからこの化学式のー…」 化学の先生のねっとりとしたした授業の声を耳に微かに捕らえながら、郭くんを見つめる。彼は授業中、決して、とは言わないがほとんど余所見をする事がない。 それはこの、3年に進級して1ヶ月でよく判っている。 ────ふいに、郭くんの頭が動いた。 教室の窓から入る、そよそよとした春風が、郭くんの前髪を乱した。 サラリと流れるその髪は、まるでキラキラしているかのように見えて、あたしは目が離せない。 目 が 、 合 う 。 郭くんが、あたしの方をちらりと見て、目が合った。 本来ならばここであたしはわざとらしくでも目を逸らさなきゃいけないのに。 郭くんの瞳が、あたしを捕らえて離 さ な い 。 ほんの数秒のことなのに、あたしの視界からは郭くん以外の全ての人が消えて、先生の気持ち悪い声もまったく聞こえなくなって。 サァ… っと、風が吹く音が頬をくすぐるように通り過ぎても、郭くんの目がやっぱりあたしを捕らえて離さない。 郭くんは、一瞬 ふ と口元を緩めて前に向き直した。何事も無かったかのように、再び授業に戻っている。あたしはそれでも郭くんから目を離す事が出来なくて。 終業のベルが鳴る、その瞬間までずっとずっと目を離すことが出来なくて。 顔が、あつくて。 きっと、あたしの顔は今、きっと。 先生が持っている鉄の棒みたいに赤く燃焼しているに違いない。 なぜかとても人気を頂いている純白英士サマシリーズ一作目。これを書いた当時はまさかこんなにハマるとは思わず、英士サマ様々です。「先生が持っている〜」クリックで続きに進みますよー。 20061018(20041106) 秋夢うい (あたしのココロに棲みついて離れない) |