静かな部屋に キイ と、嫌な音が響いた。 好きだから、大切にしたい と思うのは至極自然な事だと、おれは思う。 「…なんで来ないの?」 「なんで って言われても…」 わかんねぇよ。 とおれはベッドの上のの方を向いてそう返す。同時に自分がショックを受けてへこんでるのかも、なんでがこんなことばっかり言うのかも さっぱりわからない。 「つまんないのー」 寝転んだ体勢のまま、は ちらり と一度こっちを見て、拗ねたようにそっぽを向いて寝返りをうった。おれは小さく、けど深くため息をついてから立ち上がって床からベッドにへと、座る場所を変える。 「…なに拗ねてんだよ」 「拗ねてないもん」 がこんな風に拗ねたり、なんだか機嫌が悪くなったりするようになったのはいつ頃からだったかなんてもう、思い出せない。初めのうちはただひたすら どうすればいいのかわからなくて、ものすごく悩んだ。 「んなわけねぇだろ、何怒ってんだよお前」 「怒ってない、」 一馬の気のせいじゃないの、なんてそっぽを向かれたまま言われる台詞じゃない。何度もこんな事が続くうちに、落ち込んでいた気持ちは今度、このまま別れるのか という焦りから焦燥感に変わって、ついに練習や試合にも支障が出始めた。 「ふざけんなよお前」 「…ふざけてないし」 それを過ぎると最終的に、訳のわからないの言動や行動に イラつきから腹立たしさに変わってくる。今日だって、そうだ。 「…いいよもう。好きに結人のとこでもどこでも行けよ」 もともとが短気なおれは、優しく理由を聞いてやるなんてこと出来ない。ひょっとしたら本当に、おれの事なんか好きじゃなくなってて、 「ねぇ、結人 呼んでくれた?」 本当は結人の事が好きなんじゃないか って。 「おれ帰るわ」 立ち上がるときに、ギ とかなしくベッドが鳴った。その時でも、はおれの方を向くこともなくて 少し本気で、このまま別れてしまおうか なんて考えてしまう。 「────…じゃあな」 なんだか、気持ちは驚くほど冷めていた。付き合い始めて半年と少し、本当にのことが好きだったし それは今でも変わらないのに、 「…ばいばい」 そっぽを向いたままのが、小さくそう言った。カッ と、頭に血がのぼったのがわかった。 なんでこんなんなったのかわからないのと、それはもう本当に のことが、 「もう別れようぜ」 自分でも驚くほど、出てきた言葉の意味は重い。しまった! と思ってみても、今のこの状況では「嘘に決まってんだろ」とか、そんなこと言えるわけがなくて。 「ぁ…、」 。 と、名前を呼びたくても喉に突っかかって出てきてくれない。 「……が」 「え…?」 「一馬が、」 ────別れたいんだったら、いいよ。 おれがこんな性格の所為で、付き合うまでには随分と長い 片想い期間があった。その時の関係を一言で表すなら、 ────恋人未満。 そう、そんな感じだった。友達以上─── ていうのはよく聞くけど、おれたちの関係は本当に、そんなもの通り越して、恋人未満 っていうのが一番しっくり来るような。毎日、本当に相手のことを想っていて 目が合っただけでドキドキして、けど自然といつも傍に居る そんな。 「……わかった」 声が震えた。それ以外の言葉なんか浮かんでこなくて、ただ 頭が真っ白になった。喧嘩をする事はあっても、「別れよう」という選択肢は浮かんだことがなかったし 冗談でもそれを言った事なんか、一度もない。 「……、」 はまだ、そっぽを向いたまま振り返らない。ああ本当に、このまま終わるんだな っていうのがわかって熱く、イラついていた気持ちがすぅ と、引いていくのがわかる。 「…今まで悪かったな。…じゃあ」 ドアノブに手を掛けたら、指の先が ピリッ とちいさく痛みを感じた。静電気だ。一気に気分が沈んだ。静電気の所為だ と、思いたい。ドアノブに手を掛けなおした。引いた戸は、今のおれの気分なのか 果てしなく重く感じる。 静かな部屋に キイ と、嫌な音が響いた。 結人あたりがおせっかいにも他の女とか紹介してくるんだろうなー とか、そんな事を思った。 他 の 女 な ん か 、欲 し く な い の に 。 ああ、すげー好きなんだ のこと。でも、もう 遅い。 ────戸が閉まるまであと、30センチ。 NEXT→ 友達以上と称する程深くなく、恋人未満と称される程 近い、関係 。 あまり手を加えませんでした。 20061015(20050513) 秋夢うい (なんでもっと 早く、気付けなかったんだろう) |