大切にしたい と思うのも、この衝動と同じくらい 深い。










この半年もの間に、おれはになにを与えてやれただろう?


どくん どくん と、心臓が波打つ。自分でも女々しいな と思う。自分から言っておいてもう後悔してる、なんて。考えられない、他の何にも変えられない想いが、確かにあるというのに。

キィ と、閉まる直前にまた一つ戸の音がした。ビクン と、手が反応して動きが止まる。ふと振り返って、ほんの数センチの隙間から中が覗いて見えた。相変わらずはそっぽを向いたまんまだったけど、


「……っ」

ぎゅうと、身体をちぢ込ませるのが見えた。それと同時に、鼻をすする おと。


「…?」

思わず、おれは眉を寄せて閉めかけた戸を押して戻す。の身体がビクン と、反応するのがわかった。


「……だ」
「え…?」

ゆっくりとが起き上がった。身体をおれの方に向けて、でも俯いていて。何かを言ったけど小さくて上手く聞き取れなくて、聞き返す。「?」ともう一度名前を呼んで。


「やだ…っやだぁ…っ!」
…?」



────おれがずっとそう、思っていたように、



「一馬のこと好き、好きだから別れるなんて言わないで…っ!」
「…は?何言っ…」
「あたしのこと、好きじゃなくてもいい からっ、だから、」



キ ラ イ に だ け は な ら な い で 。



不安にさせてたのはおれの責任だ。言葉足らずで、態度にも表せられなくて。おれのサッカーの為にきっと色んなこと我慢してて。きっとすごく、


────だってずっと不安に 思ってたに違いない。


ぎゅう と、力強く抱きしめた。驚いて硬くしたの身体をもっともっと強く抱きしめる。なんで気付いてやれなかったんだろう。こんなにも、


「…ずっと不安に思ってたのかよ」
「…っふ、く…っ」

泣き続けるが頷いた。おれの気持ちにぐ と何かが突き刺さる。


「あんまり、会えなくて…でも、サッカーしてる一馬も、すごい好きだから。寂しかったけど…、」
「…うん」
「好き とか、そーいうの言って、貰えないのも不安だった し、なにも…、だから…」

あたし女として魅力ないのかな とか、とだんだんとの声が小さくなっていく。


「おれがやりたい って言わないのとかそーゆーのも気にしてたのか…?」

身体を離した。まだ俯いて、顔を上げないの顔を下から覗き込むようにして、無理矢理 唇を合わせる。少しだけ触れたの唇はすごく冷たくて、そして少し震えていた。


「かずま…っ」
「おれさ、は結人のことが好きなんじゃないか って」

ずっと不安に思ってた。 そう言うとは驚いた表情をしてそしてまたすぐ顔を歪めた。


「ごめんなさい…」
「いいよ、悪かったのおれだし。…ごめんな」

が顔を上げた。ぐ と必死に泣くのを堪える表情はすごく愛しくて、そして「うん」と言って微笑ったの表情におれも泣きそうに なる。


「あのね、別に結人じゃなくてもよかったの」
「は…?」

恥かしそうに言われたその言葉の意味が理解らなくて、思わず素になって返す。


「誰かがね、一緒にいれば一馬が好き とか、言ってくれなくても仕方ないな って」

思えるから… とそう言った、に驚いて同時にものすごく申し訳ない気持ちに襲われる。

まったくそういう気持ちにならなかったと言えば嘘になる。必死にその衝動を抑えていた時もあったし、そうなればいいな なんていつも思っていたことだ。


「…じゃあ、さ」
「…うん?」
「おれ、我慢 しなくても、」

いいのか…? とまっすぐにの目を見ていう。一瞬何を言われたのかわからない様子だったけれど、すぐに理解して直後顔が真っ赤になった。


「う、え…えぇ…!?」
「何か、そーいうことしたらのこと傷つけるんじゃないかって、」

大切にしたい、大切にする ってそういう事なんだ と。


「ずっとそう思ってたけど、」
「一馬…」

二度目に触れた唇は、さっきよりももっと 深い。
のことを想う 気持ちも、これからもずっと一緒に居たい と想う、気持ちも、


────大切にしたい と思うのも、この衝動と同じくらい 深い。


触れ合っている肌から感じるの体温が、すごくあたたかくて やさしくて。
辛いのを必死で堪えておれを受け入れてくれたがすごくすごく、いとしくて。
身体中を走る快感の中で泣きそうになりながら、心の中で 誓う。


────ずっとずっと一生、大切にするから。


今日のこと、絶対に忘れないね とわらったの頭を抱き寄せて「ん」と小さく返す。
言いたい事もいえなくて、ただただ相手の事を想って不安になる。

ずっと「未満」のままだった関係が、本当の本当に、恋人になれた。


ずっとずっと、忘れない、忘れられない。


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何だかとてもさむいお話です。あーさむいさむい。

20061017(20050613)   秋夢うい

「…くせになりそう」「ちょっとばかずま…?」