「好きです!俺と付き合って下さい!!」 決して嫌なわけじゃ、ない。寧ろこうして好意を持ってもらえる事はとても嬉しいことだし、あたしがあたしで良かった と、思える瞬間でもあるから。でも、 「ごめんなさい、悪いけど、あなたの事知らないし…」 「それは…っ付き合ってくうちにでも、知ってくれれば、それで良いから!」 あなたは名前も知らないような人と、お付き合いをするの? そう聞き返したくなるのを抑える。 こうなるとはっきり言って気分が 悪い。きっと他の誰よりも その言葉の意味があたしには、重いから。なにより、そんな自信どっから出てくるんだ と内心思う。 「…あたし、他に好きな人、居るから、だから…」 ごめんね と、大概のひとはこう言えば諦めてくれる。これでもまだ食い下がってくるようであればよっぽどの、自信家なのか。 「っ誰!?」 彼は後者だったらしい。いつもは うやむやにして、誰の名前も決して出しはしない。 振られた相手にそこまで深く追求しても、自分の株を下げるだけだ と大抵の人は「そっか」で終わってくれる。 でも、今あたしの目の前にいるこの人は、勢いと雰囲気からして「誰でもいいでしょ」では何となく済まないような気が して、 校舎裏といえば、ひと気の無い、定番の告白スポットだ。けれど野上ヶ丘中でのその場所は、定番の自白スポットだと言われている。意外と人が多く通るからだ。 その場所での愛の告白は「みてろよ、こいつは自分がオとす」と、公言している意味合いを含んでいるが為のゆえんだ。 「何でこんなトコ、通るかな」 名前も知らない彼はもう、居ない。あたしが好きだ と言ったこの人を見て、諦めがついたのか、「…わかった」とだけ小さく呟いて、走って行ってしまった。その時正直「おお」と歓心した。 (かんしん:喜び) 今 居るのは、 「俺の所為かよ」 「や、タイミングがね 悪すぎ、一馬」 クラスメイトの真田一馬、彼だ。少しムスっとした表情の彼に少し批難をぶつける。けれど内心では効果覿面だったことに感謝する。 「どーすんだよ、面倒くせぇ事しやがって」 言われて、うーんどうしよう とあたしは唸る。 正直、咄嗟に「あの人」と指さした相手が彼だとは思わず、ましてやあたしのそれに気づいた一馬が「なに?」と寄ってくるだなんて、タイミングが悪いという他にない。 「でもま、他の人じゃ無くて良かったな、て 思ってるよ」 心の底からあたしはそう思って、少し申し訳なくなってわらう。 元々、一馬とは仲が良かった。幼馴染とまではいかなくとも、互いに両親の仲が良く 何度か家族ぐるみで出掛けたりしたことがあったからだ。 「…とりあえず教室帰ろうぜ。昼休み終わる」 「あ、うん、そだね」 一馬が小さくため息をついて、そう言いながら立ち上がったので あたしもそれにならう。 その時ふと、小さな疑問が頭をよぎって、素直にそれが言葉となって出た。 「ところで、あんなトコで何してたの?」 「…、…と 一緒」 「あら、モテる男は辛いねぇ」 答えるのが少し嫌そうに言った一馬に、あたしはけたけたと笑ってみせた。それはお前も一緒だろと、微かに顔を紅くして訴えてきたのを見て、あたしはまた少し わらう。 一馬と並んで歩く、教室に戻る途中、不自然な程に人の視線がぶつかった。さっき告白されていた事がもう回ったのかとも思ったけれど、それにしては不自然な 程。 「…なんだろう、」 「なにが」 自然と声が出た。わからない? という視線を送ってみたけれど、一馬はそれに気づいていないみたいだった。陰口をたたかれてる という雰囲気ではない。寧ろどちらかというと、 ────好奇な 視線。 それに近い感じが、あたしにはした。なんだかむずがゆい感じと、嫌な感じ(というか予感?)がして、 そんな風にしているうちにもう目の前は教室だ。一馬がドアを開けた。 「───っぶ!!」 後から続いて入ろうとして、一馬の背中にぶつかって、その時鼻を強く打って変な声が出た。 身体を離してみても目の前はまだ一馬の背中だ。彼の動きが固まっていると理解した。 「え、え、なに…?」 あたしは何が起きたのかわからなくて、指で鼻を押さえながら 少し身体をずらしてそのまま一馬の後ろから教室を覗き込む。 ────おめでとう!!一馬♥ 「…、…は!?」 それはもう、黒板いっぱいいっぱいにでかでかと書かれた、ピンク色の 文字。 「ちょ、ちょっと優希!?」 顔を真っ赤にして固まっている一馬を尻目に、あたしは慌てて 親友の優希のもとに走り寄る。(そのとき数人から「よっ、おふたりさん」とわけのわからないことを言われた) 優希は「おかえり」と綺麗に微笑って、そしてわらって、 「さっきを呼び出したコが、泣きながら教室に来て 叫んでったわよ」 「は真田と付き合ってたー!!」 「わけわかんないんだけどー!!」 思わず叫んだ。 嘘とはいえ 確かに「好きな人がいる」とは言ったけど、付き合ってる人がいる とは言ってない!とあたしはさっき自分で言った事を思い出して、そう思う。 あたしの表情を見て、状況を読み取ったのか 優希が溜め息をつき そして至極楽しそうに微笑んだ。 「自分で責任取りなよ?」 お祭り好きな、クラス。あたしはぐるり とそんなに広くない教室を見渡す。元々団結力のあったこのクラスは祝福ムード満載 だ。ごくん と息を 呑む。 ────今更。言えない。 どうしていいかわからず、一馬の方を見ると 目が、合った。 彼の周りで数人の男子が「こーの、色男めー!」とわけのわからない事を言っていた。言い訳をする事も出来ない状況の彼の顔 は、面白いくらいまでにまっか だ。 「うそ、でしょー…」 なんだか、とても一馬に謝らないといけない、そんな気分におそわれた。 そして同時に、一馬の間の悪さをも ちょっと心の中で批難する。 どうすんのよ、どうにも 出来ないじゃない。 ────これが あたし達の、すべての 始まり。 NEXT→ 前のサイトからほんとひき続き。このリメイク版早く完結させたいよぅ… 20050819(20040815初版) 秋夢うい |