あたしの想い出をのせた、それは偽りの 恋。










「付き合うことにした、よ」

教室で散々騒がれた、あの後も、言い訳をさせて貰える隙なんて当然無く、今更 本当の事を言えなくなったあたしと一馬は、【恋人同士】をする事にした。
それは昨日の放課後、面白いくらいに焦っている一馬と良く話し合って、決めたことだった。

パリパリと、目の前に広げられたお菓子を頬張りながら 驚いているどころか、何か嬉しげに、そして楽しげに聞いている、この美人な親友に あたしは話を続ける。

「あの状況で、今更『付き合ってません。それはデマです』なんて、」

言えないじゃない?それに、

「あの、元凶の子だって…、まぁ自分で言うのもなんだけど さ、あたしに振られて、相手が一馬だから って身も引いて、なんていうか さ、」

可哀想 て、言うかね と、あたしは最後 言葉を濁して優希の様子を伺う。

「振った相手に可哀想 は、相手をもっと惨めにさせるだけよ?」
「や、うん、それはわかってるよ」
「…確かに、振られた事をあんな風に公言して、そう信じて言いふらした事が 嘘だったなんて、」

もっと立場、無くなるわね と、少し目を細めた、優希がそう言った。

「そう、だからね、本当に付き合っちゃえば、嘘でもなんでも、無くなるわけだし」

一石二鳥よ! とあたしは、お菓子で少し油っこくなっている指で ピースサインを作って見せる。



「それで?本当に付き合うの?」
「…、」

目を細めたまま、優希がわらった。何か裏があるんでしょう と、何でも見透かされてる気持ちになる。まったくもってその通りなんだけど、もうちょっと素直に信じてくれても良かったんじゃ… と、少し拗ねるようにして言ってやった。

「あら、の事は一番信じてるのよ?それで、」

──── そ の 真 意 は ?


「あたしたまに、優希はあたしの事、全部知り尽くしてるんじゃないか て思うときがあるな」
「わたしはそのつもりだけど?」

嬉しそうにわらった、優希の表情を見て このひとには何一つ、嘘はつけないなぁ と思う。
昨日、一馬と話したことを思い出した。そこまでする必要があるのか と、戸惑った感じの顔をした彼の表情がとても印象的だった。


「付き合うのは、本当に付き合う よ。ただ、」


────三ヶ月間の、付き合う ふり。



「…三ヶ月?」
「うん、三ヶ月ってね 王道な日数じゃない?すぐ別れるのもなんか、あれだし、これくらいが妥当だと思ったのよ」
「…また、変な事になってるのね」

きゅ と、少し眉を寄せた優希がそう言った。そんな顔で、そんな事を言っていても 優希が本当は心の底から喜んでいるのを、あたしは知っている。


「あ、もうこんな時間」
「何、なんか用事?」

ふと、目にした携帯電話の時計を見て、あたしは慌てて身支度をする。


「そ、一馬と初デート!」







「ごめん一馬!遅くなった!」

駅前、少し落ち着かない様子で待っている、一馬を見つけてあたしは、少しぷ と笑いを吹き出して彼のもとに駆け寄る。そんなあたしに気が付いて、こっちを向いた一馬が「おう」と少し気まずそうに言った。

「や、俺も今来たとこ だから…」
「ホント?よかった」

本当に愛想がないのか、気を使っているのか、そんな一馬に あたしはにっこりと笑ってみせる。
すると、一馬が照れてプイ とそっぽを向いた。そしてあ、どっちでもなかったか と内心思う。

「で、どーすんだよ今日?」
「んー…取り敢えずどっかお店入って、もっと色々細かい事とか 決めとかない?」

ただ漠然と 付き合うフリをする だけではいつどんな時にボロが出るかわからない。
もしそうなれば、事情を一から説明しないといけないし、例の彼にも本当に 悪いし。


「決めるつってもさ、」

なんかあんの? と一馬は届けられたばかりのアップルジュースのストローに口をつけた。
この人は、なんて外見と中身を裏切る人なんだろう と、あたしは変なことを思う。


「ただ言葉だけで、付き合ってる って言っても、それだけじゃ真実味 ないじゃない」

どうせなら誰も、誰にも気付かれることなくこれからの三ヶ月を終えたい。



『期限は今日から丁度三ヶ月』
『カップルで過ごすイベント事等は、それなりにキチンとする』
『どちらかに好きな人が出来たら、期限が来てなくても別れる』


「ま、これくらい かな?」
「つまりは、周りから怪しまれないようにする ってだけの事だろ?」
「そだね。…まぁ、必要に応じて手繋ぐとか、それくらいの事なら 有りだよね」

それ以上のことなんてありえないだろうし、と言ってあたしは自分の手帳にメモ書きをし、パタンと閉めるとアイスティの氷をストローで鳴らす。ストローを動かす度に、カラン と気持ちの良い高い音がして、氷がまた一つ、溶けて形を変える。

あたしは、なんだか奇妙な事になったもんだと、ぼーっと考えていた。まだ実感がない。
原因はあたしだ。そして言いだしっぺも、あたし。


────証明 したいんだ、あたしは。


少しの間、沈黙が続く。いくらフリとは言っても、誤魔化し続けるためにはそれなりに普通のカップルと変わらないような行動を、取らなきゃいけない。きっと一馬も同じ事を 考えてる。
沈黙とともに、気まずさと 少しばかりの緊張感が流れる。

そして以外にも、それを破ったのは一馬の方だった。


「…俺、付き合ったりとかした事ねぇから…、」

思うようにいかなかったりしたらごめんな と、少し俯いて、一馬はそう言った。
あまり表情は見えないけれど、ああ、なんか照れてるのかな というのはなんとなくわかった。あたしはそんな彼の様子と、言われた言葉に驚く。


「うっそぉ…何で!?一馬あんなにモテるのに!!」
「え、な、何で て言われても…」

悪いかよ とすこし顔をあげて拗ねるように、一馬は言った。やっぱり意外だ とあたしは思う。
こんな 彼の一面を他の人が見たら、もっとモテるんじゃないかなぁ と変な事を考えて。


「うん、でも大丈夫だよ。あたしも…付き合った事 無いし」

あたしのその言葉に、今度は一馬が驚いた顔を見せた。

「は、何で!あんなモテんのに!?」



「…っあは、あはははっ」
「笑うなよ…」

勢いよく笑うあたしに、一馬は拗ねたようにそっぽを向いた。そして紅い顔をして、アップルジュ
ースを飲み干す姿は本当に、なんていうか可愛かった。


「うん…、三ヶ月だけ だけどさ、楽しもうよ。まずはお互いの事、少しでも知る事 からかな?それと…」

あたしも、大分量が少なくなって、溶けた氷で少し色が薄くなったアイスティーを飲み干す。
その時ふと、嫌な想いが蘇ってきて、一度だけ軽く頭を振る。



「え?」
じゃなくて、」

ね? と、名前で呼んで欲しい と促す。


「…

照れた様子で名前を呼んでくれた一馬に、あたしは「よし」と、満足して微笑う。


「じゃ、これから三ヶ月、よろしくね 一馬」
「あ、おう、よろしく な…、


こうして、あたし達の三ヶ月は、軽い気持ちで始まりを告げた。


この先、自分たちがどんな想いをすることになるかなんて、知らずに。



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嘘恋リメイク まだ二話目…(…) 一話を書き直すよりもしんどかった。第二話難しい…
初版よりも、大分会話とか増えたり変わったり、してます。ここの一馬は意外と順応性が高い と。

20050821(20040815初版)   秋夢うい