ずっとずっと、キミをまもるよ。 ウザいくらい、雨の音がうるさく響く。 「ばいばい、一馬」 そう言ってが、俺の横を通り過ぎた。ぎり と、俺は奥歯を噛み締めて きつくきつく拳を握っていた。バカヤロ。 お前、それで笑ってるつもりかよ。そんなかおで言ったって、いくら笑ってたって。泣いてちゃ、意味ねぇよ。 この三ヶ月、俺はお前に何を してやれた?こんな、大切に想う 心を貰って。あったかい、楽しい日があって。いつも俺の欲しい言葉をくれる。幸せにしてくれる。貰ってばっかじゃねぇか、俺。 俺はを泣かせてばっかりで。気ぃ遣わせて 困らせて。なにも、してやれてない。 でも、すきだ。すきなんだ。なんでこんなに、すきなんだよ。 引きとめろよ。この腕にきつくきつく抱きしめて。すきだ って。 「さんの事を受け止める自信、無いだけなんじゃないの」 ああそうだよ、怖ぇんだ。を傷つけるのが、俺が傷つくのが。を受け止める自信も、強さもない。 こんな弱い俺に、をまもることなんてきっと出来ない。 目をつぶったら、の笑顔がちゃんと出てきてくれる。これが、これさえあれば離れても大丈夫だ って。そう思ってたのに。 「ばいばい、一馬」 頭で考えて、理解したつもりなんてなかった。先の事なんか、この際どうだっていい。ただ俺の、気持ちだけは。 自分を裏切る事が無かっただけの、事だ。 「っ!!」 考えていた時間は思ってたより短かったらしい。急いで振り返ってみてら、まだほんの数メートルの距離しか離れていなかった。 が足の動きを止めて、ゆっくりと俺の方へと振り返った。驚いている。その顔は雨と、涙でひどく濡れていて、 「ごめん、…」 「かず…ま?」 が呆然として俺の名前を呼んだ。ごめんな、本当に。俺はそんな顔をさせたくて ずっと一緒に居たわけじゃないし、あんなことを 望んだわけじゃないのに。頼むからそんなかおすんなよ。ずっとずっと、わらっててくれよなあずっと、俺の、 「俺 どうしても自分の気持ち、ごまかしきれなかった…」 好きになったりしない 確かにそう、俺自身と、に約束したはずだったのに。 「俺に誕生日プレゼント くれよ」 「え…?」 「ホントはすっげー欲しいもの、あるんだけど」 「一馬…?」 少し笑って言う、今 滅茶苦茶情けない顔してるんだろうな って自分でも思う。最初、俺が何を言っているのか判っていないようだったも、少しは感づくものがあったようで、表情がすこし変わったのがわかる。 今日は、俺たちの「付き合うフリ」の三ヶ月の契約が終了する 日。一緒に居てもいい 最後の日なんだ。明日から俺たちは、「別れた」って、言うために離れて。傍でわらえなくなる。 そんなの、ありえない。あって、た ま る か よ 。 俺は覚悟を決めて、雨の水を含んだ服を着た重い身体を動かした。服が張り付いて気持ち悪い。一歩一歩が、すごく重くて。 近くに行けば行くほど、の泣き顔が鮮明に なる。こんなかお、もう二度とさせない から。 「のことが、欲しい」 なあ俺、お前のことがすごく欲しいんだ。こんなにも好きになるだなんて、あの頃は思いもしなかった。 すごく驚いた顔をしているとは裏腹に、俺は不思議なくらい、落ち着いていた。 「のことが、欲しいんだ」 もう一度、言う。聞こえなかった なんて言わせない。俺の一番の、想い。 が顔を歪ませた。もう本当に、雨なのか涙なのか分からない位 の顔は濡れてたけど、今流れている涙だけは、 「…元気で明るくて、いつも俺の欲しい言葉を持ってて」 なんでは、俺が考えてる事とか 欲しい言葉がわかるんだろう。俺も、俺だって、にそうでありたいと ずっと願っていたのに。 「ホントはちょっと泣き虫で、数学が苦手で、」 泣かせたくない、もう二度と、泣かせない。 「そんなお前が、俺は、すきなんだ」 もう逃げたりしない。逃がしたり しない。そんなお前を、全部欲しいと思うから。 が俯いた。俺は冷たくなった指で、そっとのこめかみの辺りに触れる。はちいさくちいさく震えていて、それさえも全部 いとしい。 「…泣くなよ」 「っ一馬、ずるいよ…っ」 「いいよ」 「あたしっ…一馬に酷い事ばっかり…したのに…っ」 「んなことねぇよ」 「あたし…っあた、し…」 今になって、鼻の奥がじん としてきた。俺も泣けてきて、情けない そう思うのになんだろう もう、なりふりかまってられない。 「なぁ、もう怖がるなよ。昔のこととか、俺は何もわからないけど そんなの全然気にする事ない。俺は弱いし、情けないし、へたれ だし、頼りねぇかもしれない。だけど、」 そこで一旦言葉を切って、俺が小さく かお上げて と言うとはゆっくりと顔を上げてくれた。泣き顔も、俺にしたらすごく愛しくて。俺は少し笑う。 「かずま…」 が小さく、俺の名前を呼んだ。うん と、俺も小さく返事をして、 「だけど、俺の全部で護る。のこと、すきだから。ちゃんと、護るから」 「俺と、付き合ってください」 泣き続けるの頭を軽く撫でて、身体を自分の方に引き寄せた。の濡れた髪が、俺の頬をくすぐった。俺の胸で泣く、震えるの頭を抱えるようにして、ぎゅ と力を込める。するとも俺の背中に手を回してきて、力を込められた。 不覚にも、俺はそんなことがやばいくらい嬉しくて涙が 出て来て。 「、返事、」 今この腕の中にを独り占め出来てることが、まるで夢のような感覚。この感覚を放したくなくて、もっとぎゅう と、力を込めたらはもっと強く泣き出した。しばらくそうしていて、俺はやっと少し力を緩めて 顔を離して、気休め程度にしかならないけど、雨と涙でぐちゃぐちゃになったかおを涙を拭ってやる。 「嬉しい…っあたしも…一馬のことすき。だいすき…っ」 「…うん、」 どうしてこんなにいとしいんだろう。吸い込まれるように、ゆびさきで唇に触れた。ほんのすこし、掠めただけだったけど、少しだけの身体が拒否反応を示したのは簡単にわかった。 「いや なら、もうしないから」 「…そんなことない、」 いやじゃないよ と、笑って 小さく首を振った。その後、俺の唇に柔らかい感触がして 目をつむった。 雨なのか、涙なのか、それとも両方なのか、生まれて二回目のKISSは、冷たくて そしてすこししょっぱかった。 付き合いなんて、わずらわしい と思っていた。三ヶ月間、付き合うフリをしよう なんて言われて始めはもっと気軽に考えてた。俺もこんな性格だから、どうしたらいいのか判らなくてすごく戸惑ったけど、そうしてれば面倒な告白されたりしないかも なんて、そんな最低なことも考えてた。そんなことも、なあ全然 知らなかっただろ。 全てはあの日の嘘から始まった。 泣いて、笑って。たくさん傷ついて、傷つけて、すれ違ってやっとたどり着いた。 絶対離さないから。この気持ちは ずっとずっと、本物だから。 嘘から始まったこの恋は、 たくさんの悲しみと、哀しみを持っていたけれど。それ以上にたくさんの や さ し さ と い と し さ をくれた。 ごめん と、ありがとう。それから ダイスキ を。全部に────俺の、ありったけを。 「だいすきだよ、かずま」 それさえあれば、俺はなんだってやれる。ずっと傍にいてくれるなら、それ以上はなにもいらない。 その代わり、ずっとずっとキミをまもるよ。 いつまでも、いつまでも。 ────俺のとなりで、わらっててくれるなら。 ←BACK 嘘から始まる恋 → POSTSCRIPT ← 20070401(20041123初版) 秋夢うい |