とても魅力的に見えて、同時に 欲しい とも思ってしまった。










俺は一馬よりもへたれなんじゃないか と最近思う。
一馬と彼女については、あれから一ヶ月。上手く行っている(らしい)。
らしい というのは、俺に黙ってさっさと一馬の彼女、ちゃんに会った英士に聞いたからだ。

その時は正直英士に 裏 切 ら れ た と思った。(いやマジで)


「時間が経つと余計に言いにくくなるよ、」

しっかりしなよ結人 と余計にもお説教までもらってしまった。「うるせぇな わかってるよ」と俺は少し強がってみたけど、やっぱり英士はそんな俺の思いをわかってくれたみたいだ。


────謝れるもんならもうとっくに謝ってるよ。


あれだけ彼女にひどい事を言っておいて、今更どんな面下げて会おう っていうんだ。
何て言ったらちゃんが許してくれるのか 俺にはさっぱりわからない。

お前は何て言って謝ったんだ と聞いたら英士も英士で、


「…俺と同じ謝り方してどうすんの」


そう言われてしまった。てゆかずりぃよ。先に 一人で────、




「あー…どうしよう」
「おい若菜」

もう皆帰ってしまったグラウンドで、俺は一人ボールをこねくりまわす。すると夕日で赤くなった地面に、背後からの影が映って名前を呼ばれて俺は振り返る。


「あー…上原」
「お前まだに謝ってないんだってな」

彼女のことが大好きな、彼女の従弟。上原のちゃんへの想いを知っていて俺は、正直複雑な気分だ。何も知らない一馬とちゃんを見ていて上原はなんとも思わないのだろうか。


「…ちゃんが言ってた?」

俺はすこし顔を歪めて、上原と合わせた目をプイ とはずす。すると上原がため息をつくのがわかって、直後俺の足元にあったボールが消えて少し離れたボールのかごの縁に当たってに跳ね返る音を聞いた。


「お前相変わらずコントロールねぇのな」
「う る せ ぇ な っ」

「なぁ、ちゃん相当怒ってる…?」

すがるように上原に聞く。そんな事をこいつに確かめたって、怒っていようが怒ってなかろうが、謝らなきゃいけない事は変わらないのに。


「俺は郭から聞いたんだよ」
「英士から?」
「そのことはからは何も聞いてない」

真田との惚気話は散々聞かされてるけどな と上原は少し顔を歪めて苦笑するように言った。


「郭がに謝ったのも、こないだ郭から聞いた」
「…お前平気なの?」

最初上原は何のことか判らなかったみたいだった。聞かない方が良かったかな とも思ったけど、ああ… と言って気付いたように少し笑った上原を見て、俺は余計複雑になった。


「平気だったら、無理にでも奪ってるよ」
「え…」
が泣いてんの見るの平気なんだったら、俺は何してでも真田から奪ってるよ」

だから平気じゃないし、でも平気なんだ と上原はつよく言った。


「俺あいつのこと好きだけど、真田がに与えてやれるもの、」

俺には与えてやれないし と言って上原はもう一度ボールを強く蹴った。今度はうまい事かごに入って、うしっ と上原は小さくガッツポーズをした。


「だから俺は俺にしか出来ないやり方であいつの事護ってやんの」
「お前強ぇなー…」
「それ位イイオンナだ って言ってんだよ」

は と上原はまっすぐに俺を見て言った。遠まわしに上原が俺の事を慰めてくれてるのが判って、俺は自分があんなに悩んでたのがばからしくなってわらう。


「あんときは悪かったな」
「いいよ。俺も多少私情入ってイラついてたからな」
「ま、一馬が悪かったんだけどさ 俺も本当 マジでちゃんにひどい事言ったし」

さんきゅな上原 と言って、

「そんじゃ、あの二人の明日の予定でも、」

教えてもらおっかな! と言いながら俺は最後のボールをかごにシュートした。



***



「え、結人…」
「よ、」

一番最初に見つけたのは一馬だった。鳩が豆鉄砲食らったような顔して なんだか俺はおかしくてわらう。けど俺はそんな一馬よりもへたれ で、情けない男なんだよ。


「あ、安心しろ。何も邪魔しに来たわけじゃねぇから」
「おれなんも言ってねぇよ」
ちゃんは」

昨日上原に聞いていた二人の待ち合わせ場所に、俺は一時間も前から待っていた。まあ一時間で済んで良かったとも思う。もうすでに行った後だったらどうしようかと思ったし。(てゆーかこれはきっと上原のやつわざとだな と思った)

俺の言った質問に、一馬は自分の腕にしてある時計を目にして言った。


「あー、もう来ると思うけど…なん」
「かずま!」

一馬が何かを言いかけようとして、後ろからこいつを呼ぶ声がして一馬は振り返り、俺は少し首を動かして一馬の身体越しに向こうに視線をやる。


…」
「今日は一馬の方が早かっ…」

嬉しそうに少し頬を染めて、一馬を見ていたが すぐに俺の存在に気付いて一馬の為の笑顔が氷ついたのが一目でわかる。同時に俺の胸にもずきん という痛み。


「若菜くん…」
「あ、ひ、久しぶり」

俺らしくない。普通に話しかければ良いだけなのに、どもった自分が情けない。

「あ、と…」

あれ以来、俺とちゃんが会うのは初めてだから いくら鈍感なこいつとはいえ少し動揺しているみたいだった。一馬のくせに と肝心なところで敏感なこいつのことを思う。


、ちゃん」
「…っ」

名前を呼んだ。ちゃんは少しビク と表情を強張らせて少し俯いた。そ っと、一馬の服の袖を握ったのが視界に入った。


────この一ヶ月ずっと、考えてたはずなのに。


何度も自分の映る鏡に向かって謝る練習をしたってのに、いざ本人を目の前にすると何て言って謝るはずだったのかすっかり飛んで行ってしまった。


何ていうはずだったんだっけ。・・・何て言って謝るはずだったんだ若菜結人!

自分の中で自分に渇を入れる。


「ぁー…もうくそっ!!」

俺が少し大きな声を上げてそう言うと、二人とも それはもうめちゃくちゃ驚いて俺の方を見た。けど俺が見ているのは一馬の彼女 ただひとり。目は合ってるけど、合わせてくれてるけど、多少なり俺に怯えているのは目に見て明らかだ。
ビビってるなんて。俺らしくない。俺 ら し く な い 。


ちゃん!ごめん!!」


言って、頭を下げる。一馬が 結人… と呼んだのが聞こえた。もう散々言う事を考えてきたのに、いざ本人を目の前にするとどれもこれも馬鹿らしい。言い訳みたいに思えてくる。情けねぇよ 俺。



「若菜くん、若菜くん」

少ししてちゃんが俺の名前を呼んだ。時間にしてみればほんの数十秒。ほんの数十秒だ。
それから俺はまた数秒してから、ようやく頭を上げる。最初に見たのは一馬のほう だ。なんだか申し訳なさそうに苦笑している。俺は心の中で「全部お前の所為だぞ馬鹿」と言ってやってからちゃんの方目線を変える。


「若菜くん」


一馬の事も英士の事も、これまで二人のことを一度だって羨ましい なんて思った事は無かった。



────ああ、なんか マジで、



「若菜くんは優しいね、」

そう言って彼女はやわらかく笑った。俺に向けてくれた笑顔。それを見た一馬が馬鹿みたいに反応して顔を赤くしていた。妬いてんのか、見惚れてんのか と心の中でわらってやる。


「ありがとう」


マジに上原の言った通り、この子はすげーイイオンナだ と俺も思った。あんなひどい事を言った俺に、ありがとう だなんて。一馬の服の裾を握り締めたまま、俺にわらいかけてくれる。


そんな彼女が とても魅力的に見えて、同時に 欲しい とも思ってしまった。



「一馬」
「っなんだよ」

俺もありがとう とちゃんにわらって告げて、一馬の方に向きなおしたら一馬は慌てて自分の彼女を見て緩んだ表情を元に戻していた。


「お前のこと羨ましいと思ったの」

生まれて初めてだよバーカ と言って少し俯く。一馬が「え…」と言って表情を硬くした。これくらいの意地悪、痛くも痒くもねーだろしあわせもんめ とまた心の中で言ってやる。


「んじゃ、俺帰るわ」

仲良くなー と笑顔で手を振って、最後にもう一度 まだ握られたままの一馬の服の裾に目を遣る。





「あーあ、どうすっかなー」

帰り道の河川敷。少し大きく、声に出して言う。
とりあえず今から英士の所に行って報告だけはして、その後に────


「…、上原んとこでも行ってみっかなー…」


なあ、いいよな上原。


────フラれもん同士、仲良くしようじゃないか。




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結人が相手、というわけではなかったですけれども、彼女の笑顔に一瞬で恋におち、そして同時に失恋した若菜くん という流れで。(ぇ)

20061017(20050303)   秋夢うい

「なんつーか、俺も相当の馬鹿だよなぁ」「本当にな…」