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06* それだけが、全てだったのに 今、目の前で泣いている俺の親友の幼馴染で、俺の女友達でもあるが 小さい頃から見ていた 同じ人間とは思えなかった。肩震わせて、すげー 弱そうで。誰だよ、誰なんだよ なんて変な考えが浮かんでくる。 いつも元気で、明るくて、強気で、そんな が。今はどうしようもなく泣きじゃくって いて、どうして俺は、 ────見てるだけしか、出来ねぇんだよ。 雨の音が大きくなって来た。テレビの音も、なんもなくて。ただ、雨との、泣くおとだけが俺の耳に届いてくる。なんで気付けなかった?そう、後悔だけがまとわりついてくる。 そうだよよく考えてみりゃ、ただ幼馴染 ってだけであそこまで、一馬の傍に居たり しねぇよな。気付けなかった自分が嫌で。馬鹿みたいに一馬を祝った自分がすげー嫌で。 けど、こんなの、一馬の所為でもなければ、カノジョの所為でも、ないのはわかってるはずなのに。 「…、」 声が、かすれる。必死に呼んだ名前も、雨の音でそれは見事にかき消されて。気休めにもならない。俺は部屋のカーテンを引いて、少しでも雨の音を消そうとした。情けねぇ、女の子一人慰める事も、声掛ける事も出来ないなんて。 ごくり と息を飲み込んで、もう一度、 「…、」 二度目はきっと、の届いた。けど、気持ちにまでは届かなかったみたいで 俯いて、泣いたままこっちを見ようともしない。 なあ俺は、どうしたら、いいんだよ。 俺には関係無ぇんだから、気にする事も心配する事も無い って思えたらめちゃくちゃ楽なんだろうに、そう思えない自分でよかった なんて、そんなことを思った。(つまりは動揺、してんだ) ことばなんか、出て来ない。たのむよ、────たのむ、から。 「泣くなよ。なぁ…頼むよ…」 そっ と、少し長くて、濡れた、綺麗な髪に隠れたこめかみの辺りに、右手指を触れさせてみた。そしたら が少し身体をピク と反応させて、頭を上げて顔をこっちに向けて、 ぎゅ と、思わず俺は自分の太腿のうえに置いていた左手で 自分のジーパンを握っていた。 「ゆ…、と…っ」 自然と、自分の顔が歪むのがわかった。こんなを、俺は、知 ら な い 。 のこと、今まで女として見たことは勿論なかったし、好きだとか、そんな感情 欠片も持った事すらない。今だってそうだ。けど、今はすごく一馬の事が、こんなにまでを泣かせてる一馬が、憎くて。───にくくて。 けど一馬の所為じゃない、カノジョの所為じゃない。わかってる、わかってるのに。 に対する、特別な そんな感情なんかじゃない。ただ、いま俺の目の前で泣いてる女の子を、友達の を。 ────泣かせたくない、だけだ。 す…、との髪を後ろに掻きながら後頭部に手を回した。触れた髪はとても冷たくて 髪の先まで泣いているような気がした。するとが、ちいさく俺の名前を呼んで、 俺はもう一度だけ顔を歪ませた。折角着替えた、自分の服が濡れるのもお構いなしに、ゆっくりの身体を抱き寄せた。濡れた髪を、もっともっと指に絡ませた。その髪が冷たく、俺の頬をくすぐった。 俺が何をしたいのか伝わったのか、はまたつよく 泣き出した。ぎゅ と強く、強くの身体を抱きしめて。 「大丈夫だよ。泣くなよ」 それはまるで、小さい子供をあやすように。何度も。何度も。何が大丈夫なのかわからないのに、俺はずっとそう の耳元で囁いていた。特別な感情なんて ない。 ただ、ちいさいこどもをあやすように。 「大丈夫…」 何度も何度も、そう 言い続けた。 *** 「おい若菜ー!」 今日もリベンジじゃー!と、次の日の昼休み。アホみたいに叫びながら、アホが脇にサッカーボールを抱えて俺の元に来た(いや、そのアホも俺の友達なんだけど)。窓の外に目をやると、昨日の雨が嘘のようにあおく、晴れていて。 「わり、今日ちょっとそんな気分じゃ、ねぇんだー」 憂いたように少し、目を伏せてそう言うと、友達は驚いたように「誰だお前ー!」と叫んでいた。失礼だな俺だっていっちょまえに悩み事の一つや二つあんだよバカヤロ と言うと、友達は つまんねぇのと言って他のヤツらとグラウンドに出て行った。 「ゆ…、と…っ」 ぐしゃ と、両手で自分の髪を握るように頭を抱えた。の 事が、頭から離れない。俺の中ではまだ、雨は降り続けている。 昨日、抱きしめてからまた、1時間くらい泣き続けたを家まで送って行って。 「ごめんね結人…ありがとう、」 散々泣いてもまだ目に涙を浮かべて無理に微笑ったが、俺のあたまに焼き付いて片時も離れない。ただの女友達が、ただ失恋して泣いてただけじゃねぇか。なんで俺が、こんなに、気にしなきゃなんねぇんだよ。 そう、思うのに。 俺は少し、はー と息を吐いてから、携帯を取り出してリダイヤル履歴を開いた。いちばん新しい、履歴。ピ と音を立ててダイヤルが始まって。何度かプップップッ とお馴染みの音がしてコールが掛かる。 1回、2回、……5回、 コールの回数を、心の中で数える。回数が増えるたびに、心臓がいちいち大きく跳ねる。 『はい…』 「もしもし、俺」 『…うん、』 受話器から聞こえる、の元気の無い こえ。覚悟はしていたのに、どうしてこんなに、 「大丈夫、か?」 『うん。昨日はごめんね、結人…』 「いま、一人?」 『うん』 「…昼休み終るまでさ、電話、してよーぜ」 うん、ありがとう と、の声が 少し潤んで来たのがわかったけど、例え電話ででも、一人で泣かすよりは断然いいだろう と俺は思って、胸がくるしい。 ────泣くのが仕方ないなら、 「なあ、俺と一個、約束」 『ん、なに?』 「無理しねぇこと、我慢しねぇこと、寝る前はちゃんと歯磨きすること」 そう、冗談を交えながら言うと 電話の向こうからの「なにいってんの」という少しの笑うこえが聞こえてきて、それに一個じゃないじゃん という突っ込みに、俺は少し安堵した。 「…泣きたくなったら俺のところに来るか、俺 に電話する事」 ────泣くのが仕方ないなら、俺の傍で、俺の傍でだけで、泣いて。 やくそくだからな、わかったか! と、わざと元気にそう言って。 『うん…っ』 俺のこの言葉は、余計に泣かせてしまったみたいだった。 少しでも一馬のことを忘れられるように、少しでも泣きたくなるのが無くなるように。俺は、俺 がのことを、楽しませてやるから。一馬のことなんか、アンタ女見る目ない! って本人にそう言えるようになるまで。 俺がずっと、一緒に、居てやるから。 ────ヤバい、 俺の目標は、プロになること。そして俺に与えられた場で、俺の仕事をしっかりこなして活躍すること。その目標だけを見据えて。そんな、俺が。サッカー以外の、何かに依存するなんて。 あり得ない と、思ってた。 「じゃあまずは俺様の思わず「かっこいいー!!」とかいいたくなる話なんかを、」 ────ヤバい、俺、 もう、あたまがどうにかなってしまいそうだった。どうにかなってしまった方が、楽なんじゃないかと思える くらい。 ←BACK NEXT→ マジでkoiする五秒まえ(イタィ)(古ぃ) 20070422:最後の一行ちょっといじくり。 20070421(20041205初版) 秋夢うい |