その気持ちの意味にはまだ、気付かない。










「ね、ね、見て!一馬!これ!」

翌日の朝、一番に俺に駆け寄ってきたのその表情は、頬は紅潮していて、なんでか目が嬉々として輝いていた。その手には。

「昨日あの後ね、急いで本屋行って買っちゃった!!」

嬉しそうに、雑誌を開いて見せてくる。そのページを見て、見慣れた顔と、キャッチフレーズ。
俺はカァッと顔が熱くなるのがわかって、なんで 誰にも言ったことねぇのに と思う。バッ と手を出して、それを取り上げようとしたけど、サッと軽々避けられて、それは叶わない。

そのままは、俺から逃げるようにして、笑いながら教室の窓際まで走っていく。

「な…なん…っ」
「【プライド高きテクニシャン】…はぁ…スゴイよね!」
「な、なんでがそんなもん 買ってんだよ!」

じゃなくて。…判ってる?」

俺の言葉にムッとしたのか、そんな表情をして言って来た。言われてつい、いつも呼んでいたように呼んでしまっていたことに気が付いて、

「う、あ…ごめん」

素直に謝る俺に、はよし と微笑うと、もう一度その雑誌に目を戻した。見つかってしまったのはもう仕方がないと思って、俺は諦めて、教室の窓枠の外に腕を放り出し、溜め息をついた。


「あ、ねぇこれ…?」
「ん?」

ふいに、が雑誌を指差して聞いてきたので、俺はそれに目を遣る。

「これって昨日の一馬の友達だよね?」
「ああ…」

俺とはまた別のページに載っていた、それは英士と結人だった(しょうがねぇじゃん俺一人FWなんだから)。そして昨日と同じ、動悸が激しくなる。

「(…何で…)」
「うぅ…スゴイ ね、カッコイイよねぇ…」

────イ ラ イ ラ す る 。

何でこんなにイライラするのか、全然判らなくて。それでさらに余計にイライラと してくる。


「…うん、でもやっぱり一馬が1番 だけどね!」
「え…?」

何を言われたのか、すぐにはあまり理解出来なくて、目が合うと、はパッと目を逸らした。の顔が、少し紅くなっているのが横顔からでも、すごく良く わかって。

さらに動悸が激しくなる。けれどさっきのとは違って、…なんだか嬉しい動悸だ。


「き、…今日!何か…用事とか、あるか…?」
「え?」

暫くの沈黙があって、俺はそれを破る。そんな、緊張することなんか何もねぇのに、言葉を噛んでしまって恥かしく、思う。

「昨日…練習見に来てもらって嬉しかったから…、礼と言うか…何て言うか…」
「……」

自分で言ってて、恥ずかしくなって来た。顔が紅くなっていくのが、熱でわかる。そんな俺を見てかどうか、がぷ と笑いを吹き出した。

「んだよ…」
「何でもない!…ね、どこ連れてってくれるの?」
の行きたいとこ でいいよ…」

んー と、が考え込んだ。どこがいいかなぁ と時々小さく声を出しながら考える。暫くして、急にパッ と顔を上げて、がわらった。

「…公園!河川敷でもいいけど!」
「は…、何で…??」

俺の、心底判らない!と言うような表情を見て、は 嬉しそうに笑って言った。

「一馬のサッカーしてるとこ、もっかい見たい!」


互いに、自分の心に芽が出ている事に 気が付かない。

それはじわりと成長して────



本人達が気付くのはもう少し、先。


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短ぇ…な。第3話とこれを一緒にしても良かったんじゃないかと思うけど、昔のわたしはそんなもんお構い無しに好き勝手書いてたんだなぁ… 一馬サイドの視点、です。(寧ろこれ本編というよりサイドストーリーなんじゃないの?)

20050826(???) 秋夢うい