まだ、この想いを作り上げる事は出来ないから。せめて、希望だけでも持たせて。










愕然とする。英士の言葉と自分で、認めてしまっていた事実。

ピリリリリリリッ

ビクッ と身体が振れる。初期設定のまま変えていない、携帯電話の着信音。コイツらがここに居る今、掛けてくるのは一人しか、思いつかない。

ピリリリリリリッ

急いでポケットから電話を取り出す。焦って、上手く取り出すことが出来なかった。ディスプレイも見ないで俺は、通話ボタンを押した。


「っもしもし!?」
「早ぇな一馬」
「シッ、結人」

『あ、もしもし…一馬』

聞いて泣きそうになる、の声。


…あっ…あのさ…さっきは…」
『ごめんね、荷物。置きっ放しにしちゃって』
え…?」

謝ることも、許してもらえないのか と、その時俺は思った。いや、そもそも あんな事をしておいて、許してもらおう なんて事自体愚かな考えだ。

『今から取りに行くから』
「いや、いいよ!俺が行くから!」
『いいのいいの、英士くんたち、来てるでしょ?じゃ、今から行くから』

「ちょ…おいっ」

俺は何も言えずに、そのまま電話を切られてしまう。もう、この恋愛ごっこもそれこそ終わりになるかもしれない。あんなことをされてなお、付き合うフリなんて続けられるわけがない。
は驚くほど、いつもと同じ声だった。


「一馬?」
が…今から来る って」

「あぁ…」

英士が、の置いて行った荷物を見て 納得したように返事をする。「じゃ、俺たち帰るから」そう言って英士が結人の背中を後押しして部屋を出ようとする。


「っ英士!」

ひとりに しないで。いえるわけがないのに、きっと目は そう訴えてるに違いない。

「馬鹿。これはお前とさんの問題なんだから、俺がとやかくしたって解決するモンじゃないでしょ」
「…がんばれ一馬」

呆れたようにため息をついた英士に、珍しく結人が真面目な顔をして言った。


俺、頑張る?何に?

もうやめよう って言われるかもしれない。最低 って言われて軽蔑されるかもしれない。
俺にはまだ、ちゃんと説明できるような 完璧な答えが出て、いないのに。


***


「あれ?英士くんたちは?」
「あ…さっき…帰った」

「そなの?」


緊張して玄関を開けると、いつもと変わらないの姿。俺はこんなにも、動揺してるっていうのに。情けない。再度俺の部屋にを案内して、さっきと同じように、二人並んで座る。違うのは今までに感じたことが無いほどに 重い 空気。


「あ…のさ、さっきはごめん!俺…っ」
「後2ヶ月だよ」

「え?」

意を決して放った言葉も、のそれに遮られる。

「あたし達の『関係』も、あと2ヶ月だよ。一馬」
「そ…」
「あたしも一馬も!この変わった関係に、ちょっとおかしくなってただけだよね?」

?何言っ…」

何を言っているのか、わからなかった。俺が覚悟していたことは、批判の言葉と、軽蔑の目。けど、


「あたしは!一馬の事、好きになったりしない、」

は 俺のこの、微かな気持ちをも消し去るように 強く、


「一馬もそうだよね?」

落ち込む資格なんて、俺にはない。
このまま終わりになっても、当たり前だと思っていた。
なんで、


「……っ」
「あと2ヶ月…、」

言葉が出ない。自惚れてるだけだなんて、思いたくない。なんででそんな 自分に言い聞かけるようにして言うんだよ。
もう、これ以上聞きたくねぇよ。

なんで、

「一馬の最高の彼女を演じきってみせる」


そう言ったの顔は。今までに見たことが無いくらいに強く、そして弱く見えた。
どうして。

どうして自分から突き放すような事すんだよ。

どうして。

「…わかった」

そんな、泣きそうな顔 して。


どうして俺にほんの僅かな希望ですら、与えてくれないんだよ。



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さんサイドと一馬サイドがようやくおわった。

20070216(20031001初版)   秋夢うい