打ち砕かれてしまった全ての希望は。自分にも相手にも苦しいものなのだと。

俺は後々知る事ことと、なる。










「雨、上がってよかったね」
「あぁ、うん」

もう大分、陽が 落ち始めていた。


「あたし達の『関係』も、あと2ヶ月だよ。一馬」
「そ…」
「あたしも一馬も!この変わった関係に、ちょっとおかしくなってただけだよね?」


あの時俺は「そ…」なんて言おうと、思ったのか。
そんなのわかってる か?そんなの嫌だ か?

今となっては自分ですら何を思い、何を言おうと思ったのか。思い出す事も出来ない。


もううす暗くなった空の下、と並んで歩く。にあんなことをしたのが、ほんの数時間前のことなのに夢を見ていただけのように感じる。


「これなら明日は練習、ありそうだな」
「試合は?今日中止になった分」
「…どーかなー、まだ判んねぇな」

「…そか、」

くるくると が畳んだ傘を回す。


「今日あった事、…忘れようね。一馬」
「…、ごめん」

「……、」

ごめん とそう、言った俺に何も言ってくれなかった事が、互いに忘れる事は出来ないのだと。そう、認める事になっただけのような気がした。





「…、ごめん」


言われたあたしが何も言えなかったのは、忘れる事は出来ないのだと、きっとそれは一馬にも伝わってしまっただろうというのに、少なからずあたしは後悔して。

あと残り2ヶ月だと。
一馬にそう釘をさしたのは本当はあたし自身に、言い聞かせたかったのかも知れない。
あの時終りにしてしまえば、楽だったのに。

「もうやめよう」ってたったコレだけの言葉が言えなかった。
…言いたくなかった。


そう思う気持ちがたとえ擬似的な、錯覚を、起こしているんだと。そう言われてもコレだけはあたしの想いだと、信じていたかった。

あと2ヶ月。
少なくともあと2ヶ月は一緒に居てもいいんだって、

理由が欲しかっただけなのかも知れないけど。




「次は試合、あるといいね」
「あぁ」

笑って、が言った。あれから、初めて笑ってくれたことに安堵して 俺も微笑う。
好きにならない、なってはいけない。

そう思う事が2人の『関係』を繋ぎ留めるモノなのだと。この時本能で理解していたのかもしれない。



「応援、行ってもいいよね?」

そう言う、の瞳に不安の色が宿っているのがわかる。あんなことをした俺に、まだそんなこと言ってくれんのか と、不覚にも泣きそうになってしまう。


「あたりまえだろ」
「…うん、」

ありがとう と、が言った。それは俺の台詞だよ。泣きそうになるのを必死に喉の奥に呑み込む。


「犬代クンに負けんな!」

小さくガッツポーズして笑うが、眩しすぎるほどに。

「…藤代だろ」

っつかお前そればっか と言って笑って、以前のように笑う事が出来そうだ と、初めてそう 思った。

「俺のライバルは藤代だけじゃねぇよ。…ケガして今は…、けど帰って来るまでにどんだけ成長して帰って来るかわかんねぇし、藤代でも凄いと思う男だって、居るんだ…し…」

言って俺は、肩が撫で下がっていくのが自分でもわかった。

「一馬?」
「自分で言って…ちょっとヘコんだ」

が驚いて目を見開いていた。


「…ぷっ…あははははははっっ」
「なっ、なんだよ!?」

「一馬…おかっ…おかしーっっ」

何だよ、笑うなよ と、顔が真っ赤になって(るんだよどうせ)そっぽを向く。暫くして、半ば目に涙を溜めながら、は必死に笑うのをやめた。


「もう、いいのかよ?」
「あ、ハイ。充分笑いました」

目が合って。お互い、なんだかちょっと寂しい想いに駆られたけれど、フッと笑い合って。


「「また明日」」


まだ2ヶ月もあるんだから。



←BACK   NEXT→

話進まねぇーっ!たかが数時間の出来事に何話続いてんだよ!?と、過去の自分にツッコミ。意外と普通に出来る事にほっとした2人の話でした。そして短い…

20070216(20031001初版)   秋夢うい