伝えられない想いというのは。ただホントはそんな勇気が、無いだけで。
かたくなにまでこの関係を、壊したくなかっただけで。










テストが終れば 夏休みはあっという間だった。それまで俺達の関係は何も変わる事は無かったけど、でも やっぱり以前のように純粋に一緒に居ることを楽しむ事は出来なかった。

ぎこちなさがどうしても緒を引いて、それはもう本当にこれから壊れて行く恋人達のようだと自分でも思ったほどで。
俺達は本当には付き合っていないけど、けど確かに俺はの事が好きだった。

手を放してしまった今でも、この気持ちに変わりは 無い。も俺の事を好きなんじゃないかと、想ってくれているんじゃないかと、自惚れかもしれないけどそう 思えて。

偽りの中のオツキアイ。錯覚だっていう事実から始まった擬似的な 恋。それは本物なのか、ただ本当に擬似恋愛なのかもしれない。そんな、あやふや想いが身動きを取れなくしていることは事実だった。
甘い、希望。

けどそれも、あんな形で触れる事になってしまったの心の傷と、俺の本当の想い。


俺はどうなってもいい、どんな事があっても想いは隠し通すから。のことを追い詰めるなら、傷つけるくらいなら。
そうならない為になら、俺はどうなったっていいから。


だから には ずっと、わらってて、欲しいんだ。


***


「真田、今日は何か体のキレがいいよなー」

ハーフタイム中、ドリンクを飲みながら藤代に言われた。内心、お前にだけは言われたくねぇよ とか可愛くない事思ったけど、試合の中での興奮と その相乗効果で得られる俺の特権の事を考えると自然と気合が入った。
いつも以上に体が動いているのも、自分でわかる。

「スガ!右サイド!」
「郭!」

「っ真田くん」

須釜から回ってきたボールを、胸でトラップする。向きを変えて、ゴールに向かうとき 藤代が笑っているのが見えた。
悪いけど今日はお前には入れさせてやんねぇよ。


【ゴーーーール!!】


「っしや!」

審判の、ゴール確認の長い笛が響いて、俺は手で小さくガッツポーズ。チームのやつらが俺のところに走って来て、皆にもみくちゃにされながら(まぁほとんどが結人と藤代だったけど)、ギャラリーの方に目を遣った。
試合前からちゃんと知っていた、の 居場所。

「一馬すーごーいー!!」

何も無理をする事も無く、笑顔を向けてもらえる唯一の 瞬間。
あれから互いに無理をする事が増えて、俺はそのたび辛かったけどこの瞬間だけは純粋に笑顔を向けて貰えるんだと知った時から、俺はこの為に の為に頑張るって決めたんだ。

なあ。お前が笑ってくれるなら、俺は何だって、やるよ。

泣かせたくない、無理をさせたくない。けど本当は、本当は。
一緒に居ない方が良いのも、判ってるけどでもやっぱり一緒に居たいと 思ってる。


俺の我侭だけど、だけどでも残されたこの少ない時間に、瞬間に。出来るだけ沢山の、────笑顔を。
の笑顔をこの目に焼き付けておきたい。

「泣いてんのかよ真田ぁ!」
「泣い て ねぇよ!!」

「何てったって、かーわいい彼女が」

応援してくれてるんだもんなー!と、藤代が言った。


───彼女じゃねぇよ。


瞬間、そう 心の中で言ってしまった自分が嫌になった。「離せよ」と、肩に回されていた誰のかわからない腕を振り払って俺は位置に戻った。

「…俺、何か悪いこと言った?」
「…さあ?」

俺はその日、2得点をあげた。


「一馬」

試合の後。帰る支度をしていた時に、結人に声を掛けられた。「なに」と、返事はしたけど 結人の方は見ないし、こいつが何が言いたいのかが何となくわかるから。伊達に、ずっと一緒に居るわけじゃない。


「いいのかよ」
「……、」

結人の方を見た。結人の後ろで、英士も黙ってこっちを見ていて、もちろん英士の言いたい事も判る。どうせ結人と一緒だろ。

「…いんだよ」

英士はため息をついて、結人は不満そうに顔を歪めた。だってどうしろって言うんだよ。
夏休みに入って俺達は、それこそ一緒にいる時間がなくなって。もう二度と、一緒に登下校する事もない。

学校から離れてしまえば、本当はもうフリを続けていなくても良かったんだ。夏休みに入ってすぐに別れた って。周りの奴らにはそういう風に言ってしまえば済むことだろ。だからこれは、俺たちふたりの わがままだ。

ただこれからは、が居た今は誰も居ない フェンスの向こう側を見つめるだけ。

俺の記憶の中にある、笑顔。


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ホントに真面目に読むと矛盾ばっかり!ノリで読んでね!ノリだけで!
前は都選抜だったけど 直しでアンダ15の試合にしてみた。え、「郭」って呼んだのだれ?

20070326(20041117初版) 秋夢うい