「もう、終わりなんだ」そう、冷静に思う反面 心の底では嫌だと言ってるあたしが、居るよ。 結人から、終わりを告げる電話があってから少ししてあたしは外へと出た。どこまで続いているのかと、惹かれるままに雲を辿って歩いてあたしは河川敷でそのまま雲に見入っていた。 「半年…、続かなかったな」 「なにが?」 ひとり ぽつんと呟いた。するとすぐ後ろから声がして、あたしは反射的に振り返る。 「唯菜」 「こんな所で何してんの?」 「ん…飛行機雲、見てたんだ」 雲…、と唯菜が呟いてあたしの隣に立って彼女も一緒になって空を見上げた。 「ふーん、キレイだね」 「あたし、…結人と別れたよ」 そのまま雲を見上げながら言う。その言葉に、少なからず彼女は驚いていたようだったけど、あたしの方を見たまましばらくの間 黙って、 「…かなしい?」 「……、」 わかんない、そう返して唯菜の方を見た。そしたら彼女はふわっと微笑うと、泣きそうな顔で言った。 「うそつき、」 *** 唯菜と別れて、家に戻ると門前に見慣れた顔が立っていて、あたしに気が付くと「おかえり」と、 「英士?どうしたの?」 「うん、ちょっと」 「お母さんに言って中、入っててくれればよかったのに」 あたしは慌てて門を開けて、どうぞ と英士を中へ入るようにと促した。けれど英士は、その場から動く気配が無くて、 「英士…?」 「結人と、別れたって…?」 「え?…あ、うん…」 まっすぐに、英士はあたしを見ていた。もう結人から、聞いたのかな…?そうだよね、元々 英士の紹介だったし、そう思って申し訳ない気持ちに なった。 「せっかく紹介してもらったのに」 ごめんね、といって少し わらう。 「いつから?」 「え?」 「いつから、…もう結人に対する気持ちが無かったの?」 瞬間、ザァ と大きな風が吹いてあたしの髪が目の前で揺れて英士の姿が見え隠れしていた。 ────イツカラ、ユウトニタイスルキモチガナカッタ? 見え隠れする間から、英士の前髪が乱れて揺れるのが見えた。あたしは、泣きそうになって 微笑う。風になびいて邪魔になる髪を、押さえながらあたしは 言った。 英士の目が 見開かれたような、そんな 気がした。 結人と別れて、早くも一ヶ月が経っていた。概ね穏やかに毎日は過ぎていて、結人との唯一の連絡手段だった携帯は、あの日から電源はオフのまま。 時々、英士があたしの様子を伺いに来るようになった。その度にもう一度、結人と話をする様にと促された。 「だってもう、話す事なんてなにもないよ」 決まってあたしはそう、返した。 時々強く、結人の事を思い出す。キレイな想い出ばっかり都合の良い 記憶。嫌だった、辛かった事の方が多かったような気もするのに、 結人、元気でやってるのかな。 「、元気だったよ」 結人に会う度に、あたしに会ったことを報告するのが、英士の日課になっていたことを後になって聞いた。勿論本人からしてみればありがた迷惑だったみたいだけれど。 「関係ねぇよ」 そして結人も、その度に必ずこう返していたことも後になって聞いた。 「英士…やっぱ俺の所為、だよな…」 「一馬が気にする事じゃないよ。これは二人の問題なんだから」 この事実をあたしが知るのは、もうしばらく後のことだった。 *** 「あれ、郭じゃん」 ふたりが別れてから、二ヶ月近くが経とうとしていた頃だった。練習の帰り、聞きなれた声で名前を呼ばれて、 「偶然だね、朝木」 「練習の帰り?」 「まあ、そんなとこ」 正直、今ここで朝木に会うのはまずいものがあった。「あ、いたいた英士!…って誰?」そう言って後ろから追いかけて来た結人の間の悪さに俺は内心毒づいていた。 「…俺のクラスメイト」 朝木がの親友である事を伝えるべきではないな というのと、結人が結人であることを 朝木に伝えるべきではないというのも同時に思った。 「おーい英士!」 「なんだ一馬、お前どこ行ってたの?」 「ちょっと便所…」 「じゃ 郭、また学校で…」 朝木がそのまま、去っていってくれそうになって俺はほっとした。朝木が笑顔で手を振って、いて。 「あ、れ…あーー!!」 「うわっなんだよ一馬急に叫ぶな!」 「コイツ!!コイツだよ結人!!」 「はぁ?」 一馬が結人の名前を呼んで、朝木の表情が変わったのを俺は見逃さなかった。 「あんた、若菜結人…?」 俺はしまった、と思って少し歯をかみ締める。朝木がつかつかと、結人に近づいて。 「あんた、若菜結人?」 あからさまな態度で名前を呼ばれて、結人の表情も不機嫌なものになって。 「そうだけど、何だよお前」 「結人!!コイツだって!」 一触即発。そんな空気が流れる朝木と、結人の間を割って 一馬が慌てて訴え続けていた。 「俺が見たと2人で歩いてた男!」 *** 「なぁ結人、お前らいつ別れたんだ?」 休憩中、スポーツドリンクを喉に通した瞬間だった。突然の一馬のありえない言葉に、俺は一瞬吹き出しそうになって、ごほごほと咳をした。に会って違和感を感じたあの日から、あれから 丁度1週間だった。 「はぁ!?別れてねぇよ!」 失礼なこと言うな!と、俺は手に持っていたタオルでばかずまを攻撃してやった。そう言う俺に、一馬は心底驚いたような表情をして、息を詰まらせて いた。 「なに一馬、何かあった?」 「え、あ、いや…」 それに鋭く気付いた英士が、すぐに返した。やっぱり一馬は言葉を詰まらせて、気まずそうに一度俺の方を見てから 英士に助けを求めるような視線をぶつけていた。 俺は少なからずそれにむっとして、お弁当に入っていたタコさんウィンナーをフォークでぶすりと刺して、それを一馬の方に向けて、 「なんだよ!言えよ一馬!」 「…昨日、が…男と2人で歩いてるの見た から、」 てっきり別れたもんなんだと思って…、ああでもそうじゃないなら俺の見間違いかも。わり、気にすんな。 そこまで一馬はしどろもどろに、俺を気遣うように遠慮して言っていたけど、「見間違いじゃねぇだろ、」俺は小さい声でそう言って返して、ショックを受けるよりも先に 怒りの方が大きかった。 だからこないだ会いに行ったときも不自然だったんだな って、そう 理解できた。 「「は…?」」 英士とコイツの声が揃った。ちょっと待って と、今だコイツを指さして呆然としている一馬に、英士がなにか言おうとしてたけど、 「ちょっとあんた、何言って…」 「おい、お前!よくもに手ぇだして…」 「ちょっと待て結人!」 「止めんな英士!コイツ絶対許さねぇ…」 俺は心底腹が立っていて、思わずこの男の胸ぐらを掴んでいた。英士がなんか焦って俺を止めようとするけど、そんなもん今の俺には届かない。 一発殴ってやろうと思って、ぐ と 拳を握り締めた。 「2人共勘違いしてる、朝木は女の子なんだけど!」 「…、は?」今度は、俺と一馬の声が重なった。今英士はなんて言った? 俺は一瞬思考が停止して、英士の方を見る。英士にしてはめずらしい、焦った そん表情を英士はしていて。 「朝木唯菜 正真正銘女の子だよ」 英士は片手で顔を覆って、ため息をついた。「あんたら失礼だなー。離せよ」と、この男みないな女も不機嫌極まりない表情をしていて、俺はあわてて掴んでいた手を離した。 「え…じゃあ俺が見たの…って、」 「百パーセント、朝木とだね」 「あたしとは親友なの。まぁあたしもこんなナリしてるからよくカップルに見間違われたりするけど?」 憤然として言うおとこおんなを見て、俺は頭が真っ白になって…愕然としていた。俺は、ばかずまの勘違いでと…、 「いいよもう、終わりにしようぜ」 「結人!俺…っ」 ごめんっ、と自分の間違いを把握した一馬が、焦って青い顔をして俺に謝ってきた。…ばかずまめ。 「結人、早く のところに」 「え、…あぁ」 「はぁ!?何しに行くつもり!?」 俺の背中を押して英士が、すぐにに会いに行くように と促した。それおとこおんなが「ありえねぇ!」と叫んで、俺にに掴みかかってきた。 「あんた今更あの子に会って何言うつもりだよ!ずっと耐えてたよ、あんたから連絡が来なかろうがドタキャンされようが!の気持ちも知らずにあんな良い子あそこまで追い詰めて…あたしはアンタを絶対許さない!二度とに近づくんじゃねぇよ!!」 まくし立てるようにしてあとこおんなは一気にそこまで言うと、俺を突き飛ばして走ってった。 「結人、」 「なぁ俺、あいつの事 傷付けてばっかだったのかな…、」 言われたことに、頭が真っ白になる。いつも、は怒らないしわがままも言わないし。だからひょっとして俺はそんなに甘えてたのかも。 「結人とが別れた日、俺 に会ったよ」 呆然としている俺に英士が言って、俺は「え?」と小さく声をもらして英士の方を見る。 「本当はは黙ってようと思ったけど。これは、」 ふたりの問題だから と、言って英士は目を少し伏せた。 「あの日のは…この俺でさえ守ってやりたいって思ったよ、」 「英士…?」 焦った。まさか英士がそんなことを言うだなんて思ってなかった。は英士の紹介で知り合ったわけだし、もともとはこいつの幼馴染だし。どうしよう、英士がこのままにいってしまうんじゃないか と、思って身勝手なまでに嫌になった。どうしよう。 そんな葛藤をしている俺を余所に、英士は「けど俺じゃ駄目なのも判ってるから、」と続けて、 「聞いたよ俺、いつから結人に対する気持ちが無かったのか って、」 そうしたら急にひとつ、大きな風が吹いて英士の前髪が風に乗って揺れた。 「は、」 なぁ、俺 最低だったな。 ────あたしに対する気持ちが無かったのは結人だったよ。 俺はお前に、想いも気持ちもなにひとつ 伝えて 与えてやれてなかったんじゃないか。 ←BACK NEXT→ 三人称のものを今のわたしの書き方に直すのって時間が掛かる…(苦笑) 20070306(200407) 秋夢うい (「いま、いくから!」) |